近 藤 寿 幸
居場所からの
ものづくり
近藤寿幸について
障害者の雇用を目標に
一度は途絶えた安芸市の製炭業に僅かな光が差した。「土佐備長炭 一(ichi)」を立ち上げた、代表の近藤寿幸は、 教員をする中で出会った備長炭作りに、地域での障害者雇用の可能性を感じとり、室戸市にある窯元に弟子入りして技術を学び、平成27年7月に地元である高知県安芸市に開業しました。
教員を辞めて備長炭作りの道へ
卒業後は福祉施設に勤務した後、目指していた教員の道へ。教育に取り組む中、生徒たちの進路について考える立場になりました。
働く場所が無いのなら作ろう
学年が上がるにつれ、生徒や保護者、教員らと進路の話をする機会が増えていきます。そんな中、県東部に働く場所がほとんどないことがわかりました。子どもたちの将来を考え、「働く場所がないのなら作ろう」と思い立ちました。
県東部、室戸市には約100年の歴史がある土佐備長炭の伝統産業があり、原木の伐採か炭を出荷するまでその工程は細かく分かれています。その工程の中には、障害のある人にもできる仕事があると考え、教員を辞めて室戸市の土佐備長炭の窯元に弟子入りを決めました。
僕にしかできない事をしたい
安定した職を辞することに家族は猛反対しましたが、「僕にしかできないことをしたい」との思いを貫きました。
修業は平成25年の春から2年間。備長炭作りは経験がものをいう、まさに職人の世界です。窯の中に原木を入れると炭が出るまでは窯の中が見えません。作業工程の一つ「炭化」では、窯の5ヶ所の穴から出る空気量と2か所から入る量を調節しながら炭化の進み具合を判断し、炭の状態を判断するとても難しい工程です。頼りになるのは、煙の量や色、におい。実際に何度も備長炭を焼き、経験の中で覚えてきました。しかし、まだまだ満足はできていません。
土佐備長炭「一」の由来
土佐備長炭「一」の名前は、土佐独特の祝いの文化にちなんだもの。祝儀の包みに右上がりの堂々とした一の文字を記し、2度、3度と祝い事が重なるようにと願います。
また、山内家では戦場で白黒の「一」の文字をあしらった「かつもんじ」の紋を使い、「勝つ」の縁起をかついだと言います。
土佐が大切にしてきた「一」の文字に、「唯一無二の炭を焼きたい、一 本の炭が人をつなぎ大きな和となるように」との思いを込めました。
高知県信用保証協会 月掲載文を引用しています。